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Fiverrでマーケットを検証する

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    Nomad Dev Life
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2025-10-27-title

個人開発のマーケティングで苦戦している

個人開発でリリースしたサービスを市場に出す際、そのマーケティングやマネタイズに苦戦することは少なくありません。私も例外ではなく、ユーザーに刺さる訴求の仕方に頭を悩ませています。

最初のユーザーがなかなか見つからない。そんな試行錯誤を続けていたとき、海外のフォーラムRedditで一つのアドバイスを見つけました。

「単なるソフトウェアとしてではなく、代行サービスとして提案しましょう。」

https://www.reddit.com/r/Entrepreneur/comments/1oakb0i/comment/nkakac7/

これはまさに目から鱗でした。開発したサービスを「自分で使ってね」と提供するのではなく、その機能を自分が代わりに実行し、ユーザーの作業を代行するというアプローチです。これにより、ユーザーはツールの習熟にかける手間を省き、「結果」だけを手に入れることができます。

この新しい「代行サービス」のアイデアが市場で通用するのか、そのヒントを得るために、世界最大のスキルマーケット「Fiverr(ファイバー)」を調査することにしました。

世界最大のスキルマーケット「Fiverr」

Fiverrは、スキルや作業代行を売り買いするプラットフォームです。世界中のフリーランサーやプロフェッショナルが自分のスキルを提供しています。

Fiverrは単なる安価な市場ではなく、世界中のニッチな困りごとが可視化された巨大なデータベースとして捉えることで、個人開発のヒントがより多く得られます。

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1. プロ意識と信頼性を担保する仕組み

Fiverrを巡回してみてまず驚くのは、売り手(セラー)のプロフィールが非常にしっかりしている点です。プロフィールのhead-up image、具体的な経歴、過去の実績、そして購入者のレビューが詳細に記載されており、プロとしてサービスを提供している意識の高さが伺えます。

さらに、FiverrにはSeller Levelsという仕組みがあります。「New Seller」から「Level 1」「Level 2」「Top Rated Seller」へとランクアップしていく制度は、納品数、売上、評価など厳しい基準で決まります。これにより、市場で成功している代行サービスがどのようなビジネスモデルや品質で提供されているかを具体的に学ぶことができます。

2. $5の裏側にある価格戦略:顧客が払う「価値」

Fiverrでは、売り手が自分の提供できるサービスをパッケージ化して「出品」します。これを「Gig」と呼んでいます。

Fiverrの特徴として最も目を引くのが、最低価格が$5という設定です。これによって、「短期でワンショット(一回限り)で、すぐに結果を出す」というGigを作ることができます。これにより、新規顧客がリスクを最小限にしてサービスを試せるようになっています。

しかし、売り手の収益の核となるのは、Gig Extrasと呼ばれる追加オプションです。

価格要素内容の例個人開発者への示唆
ベーシックサービスのお試し版、簡単な修正など。最小限のニーズ(最低限の課題解決)の価格を知る。
スタンダード/プレミアムより高品質な成果物、迅速な納期、追加機能、より多くのリビジョン(修正回数)など。顧客がより多くのお金を払う「価値」はどこにあるか(スピード、品質、量)を特定できる。

この価格設定を見ることで、ユーザーが「早く」「高い品質で」「より多く」の結果を求める場合に、いくらまでなら追加で支払う意思があるのか、という価格の妥当性を深く検証できます。

3. 個人の「マイクロタスク」需要の宝庫

Fiverrで提供されているGigの中には、ロゴ制作といった定番だけでなく、「誰かに手伝ってほしいけど、大きなプロジェクトではない」というマイクロタスク(ごく小さな作業)が多く含まれています。

これらは、個人開発のソフトウェアで自動化できる可能性を秘めた作業です。Fiverrでこれらのタスクに需要があることを確認できれば、あなたのソフトウェアがまさにその代行サービスの自動化エンジンとして機能する、という戦略的な裏付けになります。

Fiverrから読み取るべき4つの市場情報

私が構築した「代行サービス」の市場性を検証するため、Fiverrで提供されているサービスを次の4つの視点から分析します。

  1. どのようなサービスがあるか(=困りごとの多様性)
    • 非常にニッチで多様なサービスから、人々がどのような多様な「困りごと」を抱え、それを金銭を払ってでも解決したいと考えているかという、市場のニーズの多様性を把握する。
  2. スキルの提供者がどのくらいいるか
    • 特定の作業代行カテゴリに存在する売り手の数から、そのスキルのコモディティ化度合いを測り、自分のサービスを差別化する必要性を確認する。
  3. どのようなアウトプットを出しているか?
    • 実際に提供されているサービスのアウトプットサンプルやレビューを確認し、自分が開発したサービスが提供できるアウトプットと比較して、優位性や差別化ポイントがあるかを検証する。
  4. サービスに対する価格の妥当性
    • ベーシックな$5のプランから、Gig Extrasを加えたプレミアムな価格までを確認することで、「このクオリティの作業に対して、市場はいくらまでなら払う用意があるか」という価格の妥当性(プライシング)の基準を把握する。

Fiverrは「サービス価値」と「価格」を検証するテストベッド

Fiverrの徹底的な調査は、単なる市場リサーチではありません。

個人開発のプロダクトを「代行サービス」として市場に投下する前に、そのメリット(ユーザーが抱える課題の解決)価格の妥当性を、実際のプロのデータに基づいて検証できる実践的なテストベッドとなります。

おわりに

今回は、Fiverrについて調べてみました。正直、もっと早く知りたかった…という気持ちです。自分が作ったサービスの粒度、Offeringの仕方等が、Fiverrのマーケットと乖離があり、この点をもう少し掘り下げて検討する必要がありそうです。

闇雲に個人開発を進めるよりも、先にFiverrでいくつかGigを作り、オーダーが多かったものを自動化する、というアプローチが良さそうです。